カリスマ降臨 ヘアサロン菅原編
来たる土曜日。
僕はカリスマ美容師として金丸さんの髪を切る事になっていた。
彼は先日とある事情で金銭難に陥りカットが出来ない危機的状況だったのだ。
「このままでは金丸さんが本物の●リラになってしまう…」
そこでボランティアでカットを名乗り出たのだった。
僕はカリスマなので予約はなかなか取れないのだが
そこはいつもお世話になっているので
VIP待遇で予約を空けたのだ。
「頼むぞ健太」
そう言われハサミを持つ僕。尊敬する人ほど髪を切る事は光栄であるが、緊張が伴う。気合いをいれて切っていく。
しかしコンディションは悪い。
秋の公園は寒く手は悴み
そして夜の20:00の為、暗く手元が見えないのだった。
「これでは実力の2/3しか出せん…」
そう思いながらもそこはカリスマとしての感覚を頼りにハサミを動かしていく。
ざくざく…ざくざく…ざくっ
嫌な予感がする音がしたがそこはカリスマ。決して動じることは無い。
僕のイメージでは金丸さんをベッカムに近づけること。そう思いサイドにカットを加えていた時だった。
僕はトランスモードに入り気がつかなかったが同じ所にハサミを5回入れていたらしい。
「やめてくれー!」
何処からか叫び声が聞こえたようだがトランスモードの僕は集中していて何も聞こえない。ランナーで言うとランナーズハイ状態なのだ。
今はカット中なのでカッティングハイとでも言うのだろう。切る感覚がとても心地良いのである。
「出来ましたよ!」僕は自信たっぷりに完成を喜んだ。
しかし金丸さんは…
「ハゲてんじゃねーか!」
「切り過ぎだよ!」
と…
僕は心血を注ぎカットをしたのだが満足出来なかったようだ。
と同時に1つ思った…
「ハゲは元々だろ?」
正明は寂しそうな表情をしていた・・・・
金丸さん、いつもありがとう。
後日、児玉さんにより修正
正明:「また頼むぜ!」